ホームレスはなぜ働かない?空き缶拾いでいくら稼げるのか徹底解説

街角や公園で、大きな袋に空き缶を詰め込んでいるホームレスの方を見かけたことはありませんか?

重そうな袋を運んでいる姿を見ると、ふとこんな疑問が頭をよぎるはずです。

「あれだけ動ける体力があるなら、なぜ普通に働かないのだろう?」
「そもそも、空き缶拾いで生活できるほど稼げるのか?」

一見すると「働くのが嫌で怠けているだけ」に見えるかもしれません。しかし実態を紐解くと、そこには「働かない」のではなく、社会の仕組み上「就職できない」という深い事情が隠されています。

本記事では、ホームレス問題の現場やリサイクルの実情に基づき、以下の真実を徹底解説します。

  • 住所不定が招く「就労不可」の無限ループとは
  • 1日歩き回って数百円?空き缶拾いの過酷な単価相場
  • なぜ「生活保護」という選択肢を拒否するのか

この記事を読めば、彼らがなぜ路上に留まり続けているのか、その経済的な裏側とリアルな心理が分かります。

「自分には関係ない」と思っていた世界が、実は紙一重の場所にあることに気づくかもしれません。

「働かない」のではなく「就職できない」?ホームレスが一般企業で働けない4つの壁

街でホームレスの人を見かけたとき、「体は丈夫そうなのになぜ働かないのか」「選り好みしなければ仕事はあるはずだ」と疑問に思うかもしれません。

しかし、実態は「働きたくない」のではなく、社会システムから一度脱落してしまったがために「就職活動のスタートラインに立てない」というケースが大半を占めます。

ここでは、彼らの前に立ちはだかる4つの構造的な壁(就労阻害要因)について解説します。

1. 住所不定・身分証なしでは銀行口座も携帯も作れない

就職活動における最大の障壁は、「住所がない」ことによる身分証明の喪失です。

日本の社会システムでは、住所(住民票)がなければ身分証明書を作れません。身分証がなければ、以下のことが不可能になります。

  • 銀行口座の開設:給与振込が受け取れない
  • 携帯電話の契約:採用面接の連絡や緊急連絡が取れない
  • レンタルオフィスの契約:住所を借りることすらできない

つまり、たとえ本人が「明日から働きたい」と強く願っても、給料を受け取る手段も連絡手段もない人間を雇う企業は存在しないというのが現実なのです。

2. 高齢化と健康問題による労働能力の低下

ホームレスの高齢化は年々深刻化しており、厚生労働省の実態調査(※)でも平均年齢は60歳を超えています。

かつて彼らの主な収入源であった「建設現場の日雇い労働」も、今は若くて健康な外国人労働者などにシェアを奪われています。路上生活という過酷な環境で蓄積された疲労や持病(腰痛、糖尿病、高血圧など)を抱えた高齢者が、肉体労働の現場で採用されることは極めて困難です。

「働ける体」に見えても、実際には労働に耐えうる健康状態ではないケースが多いのです。

3. 精神疾患や知的障害が未診断のまま放置されているケース

近年、支援団体の調査によって浮き彫りになってきたのが、「見えない障害」の問題です。

ホームレス状態にある人の中には、軽度の知的障害(IQの境界域)や、精神疾患、発達障害を抱えているものの、一度も医師の診断や療育を受けずに社会に出た人が少なからず存在します。

「人間関係がうまくいかない」「仕事の手順が覚えられない」といった理由で職場を転々とし、最終的にセーフティネットからこぼれ落ちて路上に行き着いてしまう。これは個人の怠慢というよりも、適切な福祉に繋がれなかった結果と言えます。

4. 長期間の空白期間が企業の採用ハードルになる

仮に支援を受けて住所や携帯電話を確保できたとしても、「履歴書の空白」が最後の壁となります。

採用面接で「ここ数年何をしていたのですか?」と聞かれた際、「路上生活をしていました」と答えて採用してくれる一般企業は稀です。企業側もリスク回避のため、身元が不確かな人物の雇用には慎重にならざるを得ません。

一度路上生活が長引くと、その期間自体が足かせとなり、社会復帰へのハードルが指数関数的に高くなってしまう「負のスパイラル」が存在しています。

空き缶拾いはいくら稼げる?単価相場と過酷な労働のリアル

自転車に山盛りの袋を積んでいる姿を見ると、「あれだけ集めれば結構な金額になるのでは?」と思うかもしれません。

しかし結論から言えば、空き缶拾いは「重労働かつ、極めて実入りの少ない仕事」です。早朝から夕方まで街を歩き回っても、コンビニ弁当数個分にしかならないのが現実です。

ここでは、具体的な買取単価や計算方法をもとに、彼らの懐事情を紐解きます。

アルミ缶とスチール缶の違い!換金できるのは「アルミ」だけ

まず知っておくべきは、「すべての空き缶がお金になるわけではない」という事実です。

業者が買い取ってくれるのは、リサイクル価値が高く、溶解しやすい「アルミ缶」がメインです。鉄(スチール缶)は単価が安すぎるため、個人で持ち込んでもほとんど値段がつきません。

そのため、彼らは常に磁石を持ち歩いています。磁石がつかないのがアルミ、つくのがスチールです。主にビールや炭酸飲料の缶を集め、コーヒーなどのスチール缶を避けて選別する作業が必要になります。

1キロあたりいくら?買取単価の相場と変動

空き缶の買取は「1本いくら」ではなく、「1キログラムあたりいくら」という重量制で行われます。

相場は世界的な金属価格や為替に連動して変動しますが、おおよその目安は以下の通りです。

  • 買取相場(目安):1キロあたり 100円〜150円前後
  • 必要な缶の数:1キロ = 350ml缶で約60〜70本

つまり、空き缶1本あたりの価値は1.5円〜2.5円程度です。自動販売機の下を這いつくばって1本拾っても、1円玉を拾うのと変わらない労力がかかります。

【日収・月収】朝から晩まで歩き回って稼げる限界額

では、1日フルタイムで働くといくらになるのでしょうか。

自転車に積める量の限界や、拾えるエリアの制約を考えると、1日に集められるのは多くても15キロ〜20キロ程度と言われています。これを金額に換算すると、以下のようになります。

  • 1日の稼ぎ:1,500円〜2,500円程度
  • 月収(20日稼働):3万円〜5万円程度

これが「トップクラスに稼ぐ人」の数字です。多くの場合は日収1,000円前後というケースも珍しくありません。生活保護受給額の半分以下の水準であり、ここから食費やお酒、タバコ代を捻出すると手元には何も残らないのが現実です。

条例による規制強化とライバル増加で稼ぎにくくなっている

さらに近年、この「空き缶ビジネス」は存続の危機に瀕しています。

多くの自治体で「持ち去り禁止条例」が制定され、ゴミ集積所からの抜き取りに対して罰金刑が科されるようになりました。

また、金属価格の高騰に伴い、軽トラを使った組織的な回収業者や、一般のお小遣い稼ぎ(副業)などの強力なライバルが参入してきました。自転車と徒歩だけで戦うホームレスの人々にとって、資源を確保することは年々難しくなっています。

なぜ生活保護を受けないのか?路上生活を選び続ける3つの心理

日収1,000円程度の過酷な生活をするくらいなら、「生活保護を受けてアパートで暮らせばいいのに」と考えるのが合理的です。

しかし、支援の手を拒否し、あえて路上生活を続ける人は少なくありません。そこには、単なる意地だけでは説明しきれない、複雑な心理的葛藤と制度への恐怖が存在します。

彼らが福祉(セーフティネット)を拒み続ける、3つの大きな理由について解説します。

1. 「自分で稼いで食う」という強いプライドと自立心

意外に思われるかもしれませんが、ホームレスの人々には「施しを受けたくない」という職人気質のプライドを持つ人が多くいます。

特に、かつて建設現場などで腕一本で稼いできた高齢の男性にこの傾向が強く見られます。「税金で養ってもらうのは恥だ」「死ぬまで自分の稼ぎで食う」という強い自立心が、生活保護申請への精神的なブロックとなっています。

彼らにとって空き缶拾いは、単なる小銭稼ぎではなく、社会との接点を保ち、自分自身の尊厳(プライド)を守るための労働でもあるのです。

2. 集団生活(シェルター・施設)への適応困難と拒絶感

生活保護を申請すると、まずは「無料低額宿泊所」や「シェルター」といった施設に入所するのが一般的です。しかし、この施設環境を嫌がって路上に戻るケースが後を絶ちません。

  • 相部屋のストレス:見ず知らずの他人と狭い部屋で共同生活を送らなければならない。
  • 厳しい規則と拘束:門限や消灯時間が決まっており、自由な行動が制限される。
  • 人間関係のトラブル:入所者同士の盗難や喧嘩、いじめが発生しやすい。

「あんな刑務所のような場所にいるくらいなら、寒くても自由な公園の方がマシだ」というのが、路上に戻ってくる人々の偽らざる本音です。「屋根がある=幸せ」とは限らない現実がそこにはあります。

3. 家族に知られたくない「扶養照会」への恐怖

制度利用を躊躇させる最大の壁と言われているのが、役所が行う「扶養照会(ふようしょうかい)」です。

これは生活保護を申請した際、役所が親族(親、兄弟、子供など)に対して「援助できませんか?」と問い合わせる手続きのことです。

多くのホームレスの人は、借金や離婚、家族との不和など、何らかの理由で家族と縁を切っています。「今の落ちぶれた姿を知られたくない」「これ以上家族に迷惑をかけたくない」という思いが非常に強く、「家族に連絡が行くくらいなら、野垂れ死んだ方がいい」と申請を諦めてしまうのです。

空き缶拾い以外の収入源はある?ホームレスの知られざる仕事事情

空き缶拾いは最もポピュラーな手段ですが、それだけで生活するのは困難です。

そのため、体力やコネクション、あるいは運を頼りに、様々な方法で現金を稼ごうとしています。ここでは、一般社会からは見えにくい「路上の仕事図鑑」とも呼べる3つの収入源を紹介します。

雑誌販売(ビッグイシュー)による自立支援

駅前などで雑誌を掲げて立っている姿を見かけたことはないでしょうか。

これは「ビッグイシュー」という、ホームレスの自立を支援するために作られた雑誌販売の仕事です。決して施しではなく、正当なビジネスパートナーとして契約を結んでいます。

  • 定価:450円(税込)
  • 仕入れ値:220円
  • 利益:1冊売れるごとに230が販売者の収入になる

初期費用なしで始められ(最初の10冊は無料提供)、即現金収入になるのが特徴です。「挨拶ができる」「毎日同じ場所に立つ」といった信用が必要とされますが、ここからアパート生活へ復帰した人も多数存在します。

並び屋・日雇い手配師からの単発仕事

体力に自信がなくてもできる仕事として、「並び屋」という存在があります。

人気ブランドの限定品発売、パチンコ店の新装開店、チケット販売などの際、依頼主の代わりに長時間列に並ぶ仕事です。かつては手配師(ブローカー)が公園でホームレスを集め、車に乗せて現場へ連れて行く光景がよく見られました。

ただし、近年はインターネット抽選が増えたことや、転売対策(本人確認)の厳格化により、案件自体が激減しています。たまにあっても競争率が高く、安定した収入源にするのは難しくなっています。

廃品回収や古本・雑誌の収集

空き缶以外にも、売れるものは何でも拾うのが鉄則です。

かつて主流だったのが、電車内や駅のゴミ箱に捨てられた漫画雑誌(少年ジャンプなど)の回収です。これを拾い集め、露店で定価より安く再販売する手法ですが、現在は鉄道会社の警備強化やゴミ箱の撤去により、ほぼ不可能になりました。

代わって、粗大ゴミとして出された家電から銅線などのレアメタルを抜き取ったり、まだ読めそうな古本を古書店に持ち込んだりして、数十円〜数百円の現金を工面しています。

まとめ:ホームレス問題は個人の怠慢ではなく社会の映し鏡

「ホームレスはなぜ働かないのか」「空き缶拾いで生活できるのか」という疑問から、その実態を解説してきました。

最後に、本記事の要点を振り返ります。

  • 彼らの多くは「働かない」のではなく、住所や身分証がないために「就労のスタートラインに立てない」
  • 空き缶拾いの収入は日収1,000円程度であり、生きるためのギリギリの重労働である
  • 生活保護を受けない背景には、強い自立心や、家族に知られたくないという切実な事情がある

彼らが路上にいる理由は、決して「怠け者だから」という一言で片付けられるものではありません。病気、倒産、家庭崩壊など、ほんの少し歯車が狂っただけで、誰しもがこの状況に陥るリスク(明日は我が身)を秘めています。

街で彼らを見かけたとき、単に「可哀想」や「怖い」と思うのではなく、「一度落ちると這い上がれない社会の厳しさ」と戦っている姿として、その背景に想像力を巡らせてみてください。

その理解こそが、誰もが生きやすい社会を作るための第一歩になるはずです。

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